和牛パティは最強!? – 産地と部位で異なるパティの構造 –

グルメバーガーの味を決める要素で、一番重要と言っても過言ではない「パティ」。
今までの記事で触れた「焼き方」、「挽き方」、「成形の仕方」の他に、味や食感、香りを大きく左右するものがある。
それが牛肉の産地と部位だ。
―「最高級=最高のバーガー」ではない理由―
「A5和牛のハンバーガーはさぞかし美味しいでしょうね」
これはよく言われる。しかし、グルメバーガーという料理の構造を理解すると、話は少し変わってくる。
もちろん和牛の特徴をよく理解した上で、上手にハンバーガーパティに落とし込み、唯一無二の味と食感を体現しているお店もたくさんある。
肉の美味しさを大きく2種類に分けるなら、
- 噛めば噛むほど旨い赤身型
- 口に入れた瞬間に細胞が“うまい!!”と叫ぶ脂型
和牛は圧倒的に②に強い。
しかし、ハンバーガーはステーキとは違う。
粗挽きにして、焼いて、バンズに挟み、ソースと重なり合う。更には口の中で他の材料と混然一体となって足し算以上の感動を生み出す料理だ。
この料理に必要なのは、
- 脂のインパクト
- そして“輪郭のある肉の濃さ”
故に、脂身由来のおいしさが突き抜けている和牛だけだと、意外にもハンバーガーにした時に”力強さ”や”輪郭”が出ないことが多い。
噛むほどに旨味を出す赤身と、直感的に「美味い!」を引き出す脂身を絶妙に混ぜ合わせることで、至極のバーガーパティは生まれるのだ。
ハンバーガーパティに使用される部位

*写真引用:Andrew Jimmer Kitchen Experiments: Grind Your Own Burger Blend – Andrew Zimmern
バーガーパティに使用される部分は、いわゆる“ステーキで使用されない部分”が多い。脂身が多すぎてもパティとしての旨味を発揮しない為、比較的脂身の少ない部分が使用される。代表的な部位としては
•内もも (Top side, Top round)
•外もも (Silverside)
•腕 (Clod)
•スネ (Shank)
•ブリスケット (Brisket)
•肩ロース (Chuck)
•あばら (Short Rib)
上記の部位の中でChuckとShort Ribは脂身の多い部位なので、全体の脂身の配合の調整として使われることが多い。
基本的にバーガーパティの赤身と脂身の比率は8:2もしくは7:3と言われている。スマッシュパティの場合は赤身の比率が成形パティよりも高い方が分解せずにカリっと焼き上がる。
赤身の部分のみを使用し、和牛の牛脂などを添加して全体の脂身の比率を調整する方法も人気。
産地による牛肉の特徴

■ アメリカ牛 ― USDA格付け

アメリカ牛はUSDA(米国農務省)の格付け。
主な等級は
- Prime
- Choice
- Select
● 基準
和牛と同様、主に脂肪交雑(マーブリング)と成熟度で決まる。
ただし和牛ほど極端なサシ文化ではない。
■ Choiceの幅は広い
Choiceは実はかなり幅が広い。
内部的には
- Moderate Choice (High Choice)
- Modest Choice (Average Choice)
- Small Choice (Low Choice)
の差があり、Primeに近いChoiceも存在する。
さらに、USDAの格付け+独自の基準を満たした牛肉のみに認証を与えるブランド牛がある。
例として、質の高いアンガス牛の有名ブランドであるCertified Angus Beefは、
- 主にChoice上位〜Primeの中から
- さらに独自の10項目基準をクリアした牛肉のみ
を認証しているブランド。
アメリカ牛は広大な土地で穀物肥育される。
コーン由来の脂は黄色みを帯び、甘みがある。
バーガーにしたとき、
肉の主張がはっきり出るのはアメリカ牛。
■ オーストラリア牛 ― Grain期間で変わる

オーストラリアでは
- Grass Fed(牧草肥育)
- Short Grain(約100日)
- Middle Grain(約150日以上)
- Long Grain(200日以上)
という穀物肥育期間で区分されることが多い。
● 特徴
- Grass:赤身中心、クリーン、鉄分感強い
- Grain長期:サシが増え、和牛に近づく
バーガーにした時に、クリーンで直線的な赤身主体のパティにするならばGrassもしくはShort Grain、適度な脂身の旨味・甘味を加えるならばMiddleもしくはLong Grainが適していると言える。
■ 国産

*写真引用:日本農業新聞 カテゴリ / 日本農業新聞
まず整理したいのが「和牛」と「国産牛」は別物だということ。
● 和牛とは
黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4品種、またはその交雑種。
● 国産牛とは
“日本国内で一定期間飼育された牛”のこと。品種は問わない(ホルスタインも含む)。
そして和牛には有名な「A5」などの格付けがある。
これは
- A〜C:歩留まり等級(可食部の割合)
- 1〜5:肉質等級(脂肪交雑=サシ、色沢、締まりなど)
で決まる。

*写真引用:ノベルズグループ 「枝肉」と「格付け」のお話 A5ランクのお肉はどうやって決まるの?|牧場の仕事を知る|酪農転職、田舎暮らし情報のNOBELS WAVE
つまりA5は「歩留まりが高く、脂肪交雑が最上級」という意味であって、「味の総合力」を示すものではない。
結論
最高級=最高のバーガーではない
A5和牛は“最高級”かもしれない。
しかし、グルメバーガーに必要なのは
- 赤身の濃度
- 適度な脂
- 部位の設計
- 挽き目の設計
スネやネックのような“硬いが旨い”部位を
7:3、あるいは8:2で組み上げてこそ
ハンバーガー特有の、輪郭のある凝縮パティが完成する。
それは単なる高級食材ではなく、
“構造で勝つ肉”。
これこそが、グルメバーガーの本質だ。



